営業経費とは?企業や個人事業主の経費について解説

企業や個人事業主として事業を運営する上で、避けて通れないのが「経費」の管理です。とくに「営業経費」と呼ばれる費用は、日々の業務をスムーズに進めるために欠かせないものです。

本記事では、営業経費の基本的な概念から具体的な項目、そしてその管理方法までを詳しく解説します。経費の削減を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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営業経費とは?

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営業経費とは、企業が日常的な営業活動を行うために必要とする全ての経費のことです。商品やサービスの販売を支えるための経費が含まれ、直接的な販売コストだけでなく、間接的な費用も含まれます。

営業経費は、企業の財務における健全性・効率性を評価するためにも、重要な指標の1つです。利益を最大化するためには、営業経費を適切に管理し、無駄を削減することが求められるでしょう。

営業経費の種類と判断基準

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営業経費にはさまざまな種類があり、経費として計上できるかどうかの判断基準も明確に定められています。どの項目が経費にできるのかをあらかじめ把握しておきましょう。
代表的な営業経費は、以下のとおりです。

旅費交通費 接待交際費 消耗品費 広告宣伝費
ここでは、営業経費に計上できる経費、経費に含まれるかどうかの判断基準について解説します。

旅費交通費

営業活動における旅費交通費は、企業の運営において重要な経費の1つです。この経費には、業務の遂行に必要な移動・出張に伴う費用が含まれます。

まず、業務に関連する移動に必要な交通費です。これは、客先への訪問や仕入れ先との打ち合わせ、集金などのための移動にかかる費用を指します。電車やバス、タクシーなどの公共交通機関の利用料はもちろん、業務用の車両を使用する際のガソリン代や駐車料金も含まれます。

出張に伴う宿泊費も、旅費交通費の1つです。業務のために遠方へ出張する際には、現地での宿泊費が必要になります。ホテルや宿泊施設の料金、出張中の食事代、現地での交通費なども含まれます。

ただし、これらの費用はあくまで業務に関連するものであり、プライベートな目的での宿泊や移動は経費として認められません。たとえば、出張先で観光を楽しむために追加でかかった費用は、自己負担です。

接待交際費

接待交際費とは、企業がビジネスパートナーや顧客との関係を構築・維持するためにかかる費用のことです。具体的には、事業に関連する飲食代や贈答品代、謝礼などが含まれます。

事業に関連する飲食代には、顧客や取引先との会食や接待、商談の際の食事代が含まれます。贈答品代は、ビジネスパートナーや顧客に対する感謝の意を示すためのギフトや、重要な取引の成立を祝うための贈り物などが該当します。これらの贈答品は、関係構築のために必要な支出とみなされますが、贈答品の価値や数量には一定の制限があります。高額な贈答品や頻繁な贈与は、経費として認められない場合があるため注意しましょう。

一方で、プライベートな友人との集まりなどは、接待交際費として認められません。プライベートな友人との食事や飲み会は、事業活動とは無関係であり、個人的な支出とみなされます。

消耗品費

消耗品費とは、日常の業務活動を行う際に使用する消耗品にかかる費用のことです。消耗品は、オフィスで使用する文房具・コピー用紙・クリップ・名刺・トナー・インクカートリッジなどが該当します。

消耗品費として計上するためには、購入品が以下の基準を満たしていなければなりません。まず、耐用年数が1年未満であることです。これは、購入した物品が短期間で使用され、消耗されることを意味します。たとえば、ペンやノートなどの文房具は、通常1年以内に使用されるため、消耗品費として計上されます。

購入金額が10万円未満であることも、基準の1つです。高額な物品や長期間使用する備品については、消耗品費ではなく固定資産として計上し、減価償却の対象となります。たとえば、オフィス用のパソコンや家具などは、10万円以上の購入価格であり、耐用年数が1年以上であるため、減価償却の対象となります。

広告宣伝費

広告宣伝費とは、企業が自社の製品やサービスを広く知ってもらうためにかかる費用のことです。新聞や雑誌への掲載料、テレビやラジオの放送料、インターネット広告の費用、さらにはチラシやパンフレットの印刷代など、さまざまな広告媒体を通じて行うプロモーション活動の費用が含まれます。

広告宣伝費は、企業のマーケティング活動において非常に重要です。製品やサービスの認知度を高め、潜在的な顧客に情報を届けるために必要な費用であり、売上向上に直結する投資といえるでしょう。

広告宣伝費は、即時に費用として計上されることが一般的です。ただし、支店開設のお知らせや長期的に使用される看板など、長期にわたり使用する広告物については、減価償却の対象となる場合があります。

フリーランスや個人事業主の経費の種類

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個人事業主やフリーランスにとっても、事業に繋がる出費は経費に当てはまります。確定申告で収入から差し引き計上をすると、節税に繋がるでしょう。フリーランスや個人事業主として事業を行うでは、どれだけ節税を意識できるかが非常に重要な観点です。

それぞれの概要を確認していきましょう。

営業経費を含めた経費の種類

フリーランスや個人事業主が計上できる経費には、さまざまな種類があります。これらの経費は事業活動に直接関連するものであり、正確に計上することで節税効果を得ることが可能です。

営業経費を含めた経費には、水道光熱費や旅費交通費のような営業経費のほか、損害保険料や修繕費、福利厚生費などが挙げられます。

また、車両費も重要な経費項目です。営業などで車を頻繁に使用する場合、ガソリン代や駐車場代、車検代などの費用を「車両費」としてまとめて計上できます。これにより、車両の運用にかかる全体の費用を一括で管理しやすくなるでしょう。

経費に含まれないもの

フリーランスや個人事業主が経費として計上できる出費は、事業活動に直接関連するものに限られます。事業に直接関係しない個人的な支出や特定の条件を満たさない支出は、経費として認められないため、注意が必要です。

まず、自身の生活費は経費に含まれません。具体的には、家賃や住宅ローン、食費、衣料費などです。事業活動とは無関係であり、事業の収益から差し引くことはできません

自身の健康管理のための出費も、経費として計上できないものです。たとえば、個人事業主自身が受ける健康診断費用や医療費は、事業活動に直接関連しないため経費として認められません。ただし、従業員を雇用している場合、その従業員の健康診断費用は「福利厚生費」として経費に計上できます。これは、従業員の健康管理が企業の福利厚生の一環として認められるためです。

また、個人として納める税金やプライベートな飲食費も経費として認められません。経費に含まれないものを適切に区別し、事業関連の支出のみを経費として計上することは、正確な会計管理のために重要です。

経費計上に必要な書類

フリーランスや個人事業主が経費を正確に計上するためには、適切な書類の管理が欠かせません。これらの書類は経費の正当性を証明するための重要な証拠となり、税務調査の際にも役立ちます。

まず、領収書やレシートは経費計上に必要な基本的な書類です。支出の内容・金額・支払日・支払先などが記載されているため、経費の正当性を裏付けられます。事務用品の購入や交通費、接待交際費などの支出については、必ず領収書やレシートを受け取り、保管しておくことが重要です。

請求書も、経費計上に欠かせません。とくに外注費や仕入れ費用など、取引先からの請求に基づいて支出する場合には、請求書がその証拠です。請求書には、取引の内容・金額・支払期限などが明記されており、これに基づきを支払いが行われます。領収書と同様に請求書を保管しておくことで、経費計上時に正確な支出を記録す可能です。

領収書やレシートをもらえなかった場合や、紛失してしまった場合には、出金伝票を利用することもあります。

営業経費の削減方法

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効率的な営業活動を行うことで、無駄なコストを削減し、事業の収益性を向上させられます。
具体的な削減方法は、以下のとおりです。

オンライン営業の導入 消耗品費の節約 出張費の見直し アウトソーシングの活用 CRM/SFAツールの導入 営業プロモーションの見直し
ここでは、営業経費を削減し、利益拡大に繋げるための具体的な方法について解説します。

オンライン営業の導入

オンライン営業の導入は、営業経費を削減し、業務の効率化を図るために有効です。

オンライン営業のメリットは、交通費や宿泊費といった出張関連の経費を大幅に削減できる点でしょう。従来の対面営業では、顧客訪問のために多くの時間と費用がかかっていました。Web会議を利用することで、移動が不要となり、その分のコストを削減可能です。また、営業担当者の稼働効率も向上し、より多くの顧客と接触する機会を増やせます。

オンライン営業を導入するためには、営業プロセス全体を見直し、無駄がないかを確認することが重要です。たとえば、現状の営業フローを洗い出し、どの部分がオンラインで代替可能かを検討します。これにより、効率的なオンライン営業の導入を実現できるでしょう。

また、各種ツールの導入も必要です。具体的には、Web会議システム(Zoom、Microsoft Teams、Google Meetなど)やチャットツール(Slack、Chatworkなど)が挙げられます。これらを導入することで、スムーズなオンライン営業活動を実現可能です。

消耗品費の節約

営業経費の削減方法として、消耗品費の節約が有効です。

消耗品費を削減するためには、日常的に使用する物品の購入方法や使用方法を見直します。オフィスでの印刷に関しては、両面印刷やモノクロ印刷を推奨することで、用紙代やインク代を大幅に節約可能です。カラー印刷はコストが高くなるため、必要な場合のみ使用するよう意識しましょう。

営業活動に必要な名刺や販促品、社名入り封筒などもまとめ買いも有効です。大量に購入することで単価が下がり、コストを抑えられます。とくに、販促品やノベルティは定期的に使用するものであるため、長期的に見てコストパフォーマンスの高いものを選ぶことが重要です。

消耗品費の節約には、さまざまな方法があります。効果的なのは、日常の業務プロセスを見直し、無駄を省くことです。定期的に消耗品の使用状況をチェックし、適切な管理を行うことで継続的なコスト削減が可能になります。

出張費の見直し

出張費の見直しも、経費削減に効果があります。

まず、Web会議の導入を積極的に検討することが重要です。物理的な移動が不要となるため、交通費や宿泊費を大幅に削減できます。どうしても出張が必要な場合には、お得な航空券や宿泊券を活用しましょう。航空会社やホテルが提供する割引プランやパッケージを利用することで、出張費用を大幅に抑えられます。

法人カードの利用も出張費削減に有効です。法人カードを利用することで、ポイント還元やキャッシュバックを受けられ、結果的に経費を削減できます。法人カードの利用明細を活用することで、経費管理が簡単になり、経費の透明性が向上するでしょう。

出張費の見直しについて具体的な方法を知りたい方は、以下を参考にしてください。
関連コラム:「旅行会社で出張手配するメリット~どのくらいの経費削減ができる?

アウトソーシングの活用

アウトソーシングの活用も、営業経費の削減に有効です。業務の一部を外部に委託することで、固定費を変動費に変えられ、効率的な経費管理が可能になります。

営業活動の一部を外部に依頼することも、一案です。新規顧客のリストアップや問い合わせ対応などの業務を、専門のアウトソーシング会社に委託できます。これにより、営業担当者はより高度な営業活動やクロージングに集中でき、営業全体の効率が向上するでしょう。

また、コールセンターのアウトソーシングも効果的です。顧客対応やフォローアップのためのコールセンター業務を外部に委託することで、社内リソースを節約しつつ、高品質な顧客対応を維持できます。

アウトソーシングには、一定のコストがかかります。しかし営業担当者は継続営業のフォローや休眠顧客の掘り起こしなどの他業務を担当できるため、トータル的に利益拡大可能です。

CRM/SFAツールの導入

営業活動を効率化するCRMツールやSFAツールの導入は、営業経費を削減するために有効です。ツールを活用することで営業プロセス全体の管理と最適化が可能となり、結果としてコストの削減と売上の向上が期待できます。

CRMツールは、顧客関係の管理を一元化するためのシステムです。顧客情報をデータベースに集約するため、営業担当者が必要な情報に迅速にアクセスできるようなります。顧客対応が効率化され、無駄な重複作業を削減可能です。過去の取引履歴やコミュニケーション履歴を簡単に参照できるため、顧客のニーズに即した提案が可能となり、顧客満足度が向上します。顧客の購買傾向や行動を分析することで、クロスセルやアップセルの機会を見逃すことなく、売上の最大化を図れるでしょう。

SFAツールは、営業活動を自動化し、営業チームの生産性を向上させるためのシステムです。見込み客の管理や商談の進捗状況をリアルタイムで把握できるもので、営業プロセスのボトルネックを特定し、迅速に対策を講じられます。具体的には、リードの追跡や商談の進行状況の可視化、タスク管理などです。営業担当者は効果的な時間管理ができ、重要な業務に集中できます。

営業プロモーションの見直し

営業経費を削減するためには、営業プロモーションの見直しも検討してみましょう。

営業プロモーションの見直しは、営業経費を削減し、効果的なマーケティング活動を実現するために重要です。現在のプロモーション活動を分析し、無駄なコストを削減するだけでなく、費用対効果の高い方法を採用することで、効率的な営業活動が可能になります。

現在行っている広告や販促活動がどの程度の効果を上げているか、定量的な評価が必要です。これにより、どの活動が効果的であり、どれが無駄なコストを発生させているかを明確になるでしょう。

その上で、SNSやWebマーケティングの活用を検討します。SNSは、低コストで高いリーチを持つため、費用対効果が非常に高いプロモーション手法です。とくに、ターゲット層に直接アプローチできる点が大きなメリットといえます。

営業経費を効果的に削減するための3つのポイント

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コスト削減はやみくもに行うのではなく、目的や方法を明確にした上で社内全体で取り組むことが大切です。取り組む際には、下記のポイントを押さえておきましょう。

営業担当者のモチベーションに配慮する 過度なコスト削減は控える 中長期的な視点で取り組む
上記の点を意識することで、効果的な営業経費削減が可能です。それぞれ解説します。

営業担当者のモチベーションに配慮する

営業経費を効果的に削減するためのポイントは、営業担当者のモチベーションに配慮することです。過度なコスト削減は、営業担当者の働く環境を悪化させ、モチベーションを低下させる可能性があります。結果として、営業成績の低下や従業員の離職率の上昇を招くかもしれません。

まず、コスト削減の目的と方法を明確に共有することが必要です。営業担当者がなぜコスト削減が必要なのか、その具体的な方法と期待される効果を理解することで、納得感が生まれます。これにより、削減活動への協力意識が高まり、モチベーションを維持しやすくなるでしょう。

成功事例や成果を共有することも有効です。コスト削減によって得られた成果を適宜フィードバックし、成功事例を共有することで、営業担当者が削減活動の重要性とその効果を実感できます。削減した経費を利用して新たな営業ツールを導入したり、インセンティブを提供したりするなど、営業担当者が実際に恩恵を感じられる形にすることが重要です。

過度なコスト削減は控える

営業経費の削減を進める際には、過度なコスト削減を控えることが重要です。コスト削減は利益の拡大や業務効率化を目指すための手段であり、それ自体が目的ではありません。無理な削減を行うと、かえって企業の成長や営業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

まずは、業務効率やサービス品質の維持が重要です。過度な削減は、営業担当者が必要なリソースを使えなくなり、業務効率の低下やサービスの質の低下を招くことになりかねません。顧客満足度が低下し、最終的には売上の減少に繋がる恐れもあります。営業経費を削減する際には、業務の重要性や優先順位を考慮し、無駄な出費を削減する一方で、必要なリソースを確保するよう心がけましょう。

また、従業員の働きやすさと健康にも配慮が必要です。過度なコスト削減は、従業員に過剰な負担をかけることがあり、これが結果的にモチベーションの低下や離職率の上昇に繋がります。従業員の健康や働きやすさを維持するためには、必要なサポートやリソースを提供することが重要です。

営業費削減はあくまでも利益拡大や業務効率化のための1つの手段であり、それ自体が目的でないことを理解しておきましょう。

中長期的な視点で取り組む

営業経費の削減は、短期的な効果を追求するだけでなく、中長期的な視点で取り組むことが重要です。短期間での成果を求めるあまり、無理な削減を行うと、持続可能な改善が難しくなるだけでなく、企業の成長や競争力に悪影響を及ぼすことがあります。

中長期的に取り組むためには、計画的な目標設定が必要です。具体的な削減目標を設定し、それを段階的に達成していく計画を立てましょう。1年間で何%の経費削減を目指すのか、3年間でどのようなコスト構造の改善を図るのかといった目標を明確にし、それに基づいて計画を立てます。

また、削減効果のモニタリングと評価も欠かせません。中長期的な取り組みの効果を測るためには、定期的に経費削減の進捗をモニタリングし、評価することが重要です。たとえば、毎月の経費削減額をチェックし、計画通りに進んでいるかを確認します。そして、必要に応じて計画を修正したり、新たな削減策を取り入れたりすることで、継続的な改善を実現できるでしょう。

まとめ

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営業経費は、日々の営業活動を円滑に進めるために欠かせない経費です。これらの経費を適切に管理し効果的に削減することで、利益を最大化できます。

また、経費削減によって得られた利益を有効活用し、事業の拡大や新たな投資に繋げることで、長期的な成功を目指せるでしょう。日々の業務において、どのように経費を削減するかを考えるところから始めてみてはいかがでしょうか。

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