海外在留邦人のワクチン接種「いつ、どこで受けられる?」
2019年度の外務省調査によると、海外に住む日本人(いわゆる海外在留邦人)の数は139万人程。この数は過去最多を記録していた前年から約2.84%増加し、過去最多記録となっています。
さて、2019年12月末に新型コロナウイルスが発生して早2年が経とうとしています。2021年になり、世界的にワクチン接種が進み始め、感染収束の切り札として期待が高まっています。日本在住の私の元にも自治体からワクチン接種券が届いたところですが、海外に住む日本人はどのように接種するのでしょうか?海外のご自宅宛てに接種券が国際郵送される・・・なんてことはありません。
今回は海外在留邦人の方のワクチン接種について、2021年8月現在までに各国大使館から公表されている情報を元にご紹介します。駐在員の方は勿論、海外に知り合いがいらっしゃる方にもご一読いただけると幸いです。
1. 主要国の在留外国人ワクチン接種状況
タイ
タイ政府は2021年6月7日、在留外国人向けの新型コロナウイルスワクチン接種登録に関する専用サイトを開設しました。60歳以上または7つの基礎疾患のいずれかのある外国人が対象となっています(※7つの疾患とは(1)重症慢性呼吸器疾患、(2)心冠血管病変、(3)慢性腎不全(ステージ5)、(4)脳卒中、(5)化学療法を受けている担がん患者、(6)糖尿病、(7)強度の肥満を指します)。接種場所や接種時間も限られており、接種されるワクチンについては、シノバック製およびアストラゼネカ製となっています。さらに在タイ日本国大使館は、現地医療機関と連携し、タイ在住の日本人向けのワクチン接種事業を開始しました。8月2日現在、バンコク及びシラチャの8つの病院が日本人専用の登録システムを設けています。詳細は以下リンクよりご確認ください。
さらに8月下旬よりタイ保健省、在タイ王国日本国大使館・在チェンマイ日本国総領事館及び協力病院(チェンマイ・ラム病院、ラジャウェー・チェンマイ病院)の連携により、チェンマイにおいても、日本人専用の新型コロナ・ワクチン予約受付・接種が始まることになりました。こちらの事業もタイ政府の方針に基づき、優先順での接種受付となっております。
※タイ保健省 在留外国人向けワクチン接種登録サイトはこちら(https://thailandintervac.com/)
※タイ在住日本人向けワクチン接種事業詳細はこちら(https://www.iace.co.jp/bts/info_list/210729_thailand_01.html)
※8月2日更新 タイ在住日本人向けワクチン接種事業 接種可能病院の追加に関してはこちら(https://www.iace.co.jp/bts/info_list/210802_thailand_01.html)
※8月18日更新 チェンマイにおける日本人専用接種に関してはこちら(https://www.iace.co.jp/bts/info_list/210818_thailand_01.html)
インドネシア
インドネシアではいくつかのケースでのワクチン接種が可能です。
(1).ゴトンロヨン・ワクチンプログラム
こちらのプログラムは2021年5月27日に開始されました。ゴトンロヨン・ワクチンプログラムに参加する企業の従業員であれば、外国籍でも接種が可能となっています。
(2).一般住民を対象とした政府主導の無料ワクチンプログラム
こちらは60歳以上であれば外国人の接種対象となっていますが、受付・接種の可否、ワクチンの種類、登録方法の詳細は、最寄りの医療施設に問い合わせる必要があります。
※在インドネシア日本国大使館 在留外国人向けワクチン接種に関するお知らせはこちら
(https://www.id.emb-japan.go.jp/info20_20j_nyukokuFAQ.html#no15)
中国
中国は他国と比較すると、かなり早くから外国人に対するワクチン接種を開始しています。2021年4月2日、上海市、江蘇省、浙江省は居住外国人も新型コロナウイルスのワクチンの接種対象に含める旨を発表しています。
(在上海日本国大使館 https://www.shanghai.cn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00369.html)
接種までの流れはとてもスムーズで、「健康クラウド」アプリからワクチン接種告知同意書に同意し、個人情報を入力します。こちらをアプリ経由で提出すると、希望日程・時間での予約が可能となります。当日はパスポートと有効な在留・居留証明書類を持参の上で、指定の病院に行くだけで接種が可能なようです。
マレーシア
7月31日、JKJAV(COVID-19ワクチン供給特別委員会)が、クランバレー地域におけるウォークインワクチン接種について、詳細を発表しました。在留外国人が接種可能な日程は以下通りです。
8月9日(月)~11日(水):40歳以上又は基礎疾患を有する方
8月12日(木)~22日(日):18歳以上の方
(※いずれの日も開始時間は14時)
接種場所は「Stadium Nasional Bukit Jalil」のみとなっており、こちらの制度を利用される際はクランバレー地域在住であることを示すものが必須です。
ベトナム
ベトナム政府は6月末時点で約450万回分のワクチン(主にアストラゼネカ社製)を確保していますが、医療従事者、隔離施設の職員、感染地域内の工場労働者等から接種を開始するため、在留外国人に対する統一的な接種方針はいまのところ未定です。接種開始となる際は、実施前に問診票及び同意書の提出が求められ、実施後に予防接種証明書を受領することになる見込みです。
※在ベトナム日本国大使館 在留外国人向けワクチン接種に関する通達はこちら
(https://www.vn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/corona_vaccine.html)
韓国
韓国では8月26日から9月30日の期間、満18歳~49歳の方に対するワクチン接種事業が開始されます。予約期間は8月9日から8月18日の間で10部制(※注)の事前予約が必須となっております。予約方法や接種機関などの詳細は以下リンクよりご確認ください。
※注 10部制とは、生年月日の末尾と予約日の末尾が一致する日に予約が可能となるものを指します。
※在釜山日本国総領事館発信 満18歳~49歳の方対象のワクチン接種事業詳細はこちら
https://www.iace.co.jp/bts/info_list/210730_korea_01.html
アメリカ
ワクチン先行国ともいわれるアメリカ。ニューヨークでは、グランド・セントラル駅や、長距離列車などが発着するペンシルバニア駅の2カ所をはじめ、市内の主要駅で予約なし接種が可能となっています。さらに、ワクチン接種を観光客に提供する動きも広がっており、「誰でも気軽に」ワクチン接種ができる状況が整っていると言えます。
オーストラリア
オーストラリアではビザ種類にかかわらず、全ての居住者の接種が可能で、オーストラリア国民でない人も、永住権を持っていない人でも、無料で受けられることになっています。ただし接種には優先順位が設けられており、50歳以上の方や危険度の高い重要業、18歳~49歳のアボリジニおよびトーレス海峡諸島人等が優先接種対象とされています。7月30日よりシドニー大都市圏内のNSW州政府指定のワクチン接種施設において18歳以上の方は誰でもアストラゼネカ社製ワクチンを接種できると発表されましたが、情報は都度アップデートされますので、随時以下サイトをご確認ください。
※7月30日より開始 18歳以上のワクチン接種に関しての詳細はこちら(https://www.iace.co.jp/bts/info_list/210731_australia_01.html)
※オーストラリア保健省 ワクチン接種に関するお知らせはこちら(https://www.health.gov.au/node/18257)
2. 2021年8月1日開始!海外在留邦人向けワクチン接種
さて、上記で主要国のみをご紹介しましたが、多くの国で優先順の接種となっており、年齢やビザなどの条件を満たしていないために接種できないという方もいらっしゃるかと思います。そこで、日本政府は2021年8月1日より「海外在留邦人向けワクチン接種」を開始します。こちらは接種時点で満12歳以上であり、なおかつ日本国内に住民票を有していない方が対象となっており、2021年7月19日より専用サイト経由での予約が開始されています。接種は成田空港と羽田空港の入国後エリアに設置される特設会場となっていますが、2回目の接種は異なる会場でも可能です。なお、こちらの接種をご検討の際は検疫所が確保する宿泊施設での10日間待機措置の対象となる変異株指定国・地域からの帰国者に該当していないか、予約日までに帰国便の予約が可能かを、必ずご確認ください。
また8月25日よりアストラゼネカ製のワクチン接種も開始されます。こちらの事業においてアストラゼネカ製の接種が可能な方は以下条件を満たす方です。
ア 既に居住地でAZ製ワクチンを1回接種している方で、居住地で2回目の接種を受けることに懸念等がある方
イ アレルギー等により、mRNAワクチン(ファイザー製ワクチン)を接種出来ない方で、居住地でワクチン接種を受けることに懸念等がある方
※外務省 海外在留邦人向けワクチン接種詳細はこちら(https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/vaccine.html)
※アストラゼネカ製ワクチン接種に関しての詳細はこちら(https://www.iace.co.jp/bts/info_list/210816_japan_01.html
3. まとめ
今回は主要国の在留外国人向けのワクチン接種状況と、日本帰国後に接種できる制度についてご紹介しました。帰国便も限られており、また慣れない環境での感染症対策に見舞われているかたもいらっしゃるかと存じますが、接種をご希望の方が1日でも早く接種できることを願っています。
また外務省は、以下国内5つのNPO団体と連携し、在外邦人の方が抱える孤独・孤立及びそれに付随する様々な問題解決に向けて取り組みを初めています。日本語によるチャット・SNS相談等を承っていただけるようなので、併せてご活用ください。
特定非営利活動法人「あなたのいばしょ」(https://talkme.jp/)
特定非営利活動法人「自殺対策支援ライフリンク」(https://yorisoi-chat.jp/)
特定非営利活動法人「東京メンタルヘルス・スクエア」(https://www.npo-tms.or.jp/)
特定非営利活動法人「チャイルドライン支援センター」(https://childline.or.jp/)
特定非営利活動法人「BONDプロジェクト」(https://bondproject.jp/)
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※本書の内容は、本書執筆時点(2022年11月1日)の内容に基づいています。